2019.06.16

技術の進歩で劇的に変わったクルマの維持環境

【シリーズ・平成から令和へ3】

経験と勘による整備からコンピュータ診断の時代に


現在では20年落ちの中古車でもコンピュータによるトラブルのチェック機能を備えていて、これを診断するコンピュータもインターネットで流通し、整備工場はもちろんユーザーでも安価に手に入れることができるような時代になっているが、2000年前半はまだまだアナログ整備が主流の時。もちろん当時も最新モデルではコンピュータ診断による効率的な整備が行なわれていたが、それはまだディーラーから門外不出といった状態で、新車保証が残るような高年式車に限ったことだった。

中古車として一般的だったのは、メルセデス・ベンツなら初代EクラスことW124タイプ。それも92年以前のSOHCエンジンを積んだモデルもまだまだ多く、これは機械式の燃料噴射システムを搭載しているため、燃料の圧力を見ながらの経験値と勘による整備が必要だった。当然、技術のない修理工場に出してしまえば、あっちを換えても直らず、こっちを換えても直らずと、まともな診断もせず試しに部品を次々に換えていくという整備が当たり前のように行なわれていた。「まずは安い点火系のディスビキャップやプラグコードから換えてみましょうか」といったことを、平気でユーザーに言う修理工場もあった時代。とにかく輸入車の維持にはお金がかかるというのが定説で、実際にそういう目に遭っているユーザーも少なくなかったものだ。

さらにもっと酷いのが、整備伝票には色々と計上して、実際に作業はしていないという「やらずボッタクリ」まで横行していた。「お客さんは他の工場でエンジンをオーバーホールしたって言ってるんだけど、どう見ても何もやっていないんだよね」なんて話が、よくメカニックから出ていたものだ。中古車の販売店にも、修理工場にも、グレーな世界が色濃く残っていた時代である。

しかしアナログならではの便利なこともあって、中古パーツが色々と利用できたのはこの時代まで。コンピュータユニットなどもシンプルな構造のもので、他の同型車から持ってきて差し替えれば使えてしまう。今のように専用のコンピュータでコーディングしないと動かない、なんてややこしいことは一切なかった。もちろんリレーやスイッチ類なども中古が使い放題。このためメルセデス・ベンツやBMWなどの中古パーツを扱うショップも多かった。

しかし今やディーラーでの整備は高度にシステム化されており、個々のメカニックの技量に負う部分は確実に存在するものの、システムの流れに従って手続きを踏まないとエンジンもかからなくなってしまうようになった。しかしこうした変化は、クルマの信頼性を高め、燃費性能を向上させ、さらには排ガス浄化を進めてきた結果でもある。こうしたことの延長に、今話題の自動運転など、未来の技術があるのである。

■GERMAN CARS 2019年2月号 掲載記事より抜粋

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