2019.09.17

3つのキーワードで探るドイツ車クラシックカーの魅力(後編)

※本記事の前編はこちらをご覧ください。
https://automobilesjapan.com/articles/detail/273


スタイリングデザインの自由度が高かった時代に2人のカリスマが描いた名車たち

クルマを含めた工業製品は、開発・設計段階で決められた性能要件を満たしつつ、ユーザーに受け入れてもらうための工業デザインを施す。それは自動車だけでなく家電なども同じ。性能、予算など定められた条件の中でデザインしていくので、美術品などのようにアーティスティックな物を作るのとは方向性が異なるのは当然。それでもジャーマンクラシックを見ると美しく個性的だと感じるのはなぜだろうか。ジャーマンクラシック3つのキーワードの2つめは「デザイン」。

その理由の一つに燃費性能の追求が挙げられる。現代のクルマにとって燃費性能が非常に重要なことはご存知だろう。ファミリー向けのコンパクトカーだけではなく、たとえ大排気量のフラッグシップモデルであっても、現代のクルマ作りにおいて燃費性能を向上させることは避けられない命題なのだ。

燃費性能にとって重要なのはエンジンはもちろんだが、空気抵抗の少ないボディを作ること。それゆえ、高度な空力コンピュータ解析をもとにしたスタイリングデザインがなされているのが現代のクルマだ。理想を追求すればどれも似たような形になるのは避けられないわけで、燃費性能の優先度を高くしてきた当然の結果である。



では、ジャーマンクラシックはどうなのか。とくに1970年代後半からクルマに対する効率化が求められるようになり、空力についても改善されるようになった。それでも現代のような高度なコンピュータ解析はそもそも技術的に不可能な段階であって、デザインの自由度が高かった時代だ。ただし、それだけで美しいデザインが生まれるかというとそうではない。自由度が高いということは、デザイナーのセンスがより際立つということでもある。

そんな時代にドイツ車のラインの多くを描いて有名になったデザイナーが、ポールブラック氏とブルーノサッコ氏。二人ともダイムラーベンツ出身であり、ポールブラック氏は後にBMWに入社している。この2人が描いたドイツ車には我々がよく知るものも多い。タテ目のメルセデス、BMWの初代6シリーズ、初代5シリーズ、初代3シリーズ、初代7シリーズなどを手がけたのはポールブラック氏。メルセデスW126、W201、W124などをブルーノサッコ氏が手がけている。クルマのデザインはチームで行なわれるので、全てを1人で描ききったというわけではないが、それぞれ責任ある立場でこれらのクルマたちを完成させている。

今よりも燃費などの性能要件のハードルが低かったとはいえ、今もなお多くの人々を魅了するデザインは、この時代だからこそできたものであると同時に、2人のデザイナーの存在は大きい。

ジャーマンクラシックに乗るユーザーから「デザインが飽きない」という声をよく聞くが、確かにどこか温かく、落ち着いた佇まいを感じさせる。時間が経つにつれて馴染んでいくようなイメージだろうか。現代のクルマにそうした想いを抱けないからこそ、ジャーマンクラシックの美しいデザインは長く愛されているのである。

■GERMAN CARS 2019年8月号 掲載記事より抜粋

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